2022 年 5 月 5 日

山内マリコ著『メガネと放蕩娘』(文藝春秋)を読む

Filed under: 副代表 中島 | Author:STAFF | 時刻:11時14分

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山内マリコさんの小説作品を読むのは初めて。

山内マリコさんは、富山市出身の若手作家。アタシはこの人を講談師神田伯山先生との対談動画で知り、とてもお着物が似合う美人なので、なんとなく気にかけていました。

寂れゆく地方都市の商店街を、よそ者、若者、バカ者が、元気な街に復活再生させてゆくというストーリー。市役所の広報部署につとめるアラサー女子の姉タカコと、元ギャルでシングルマザー実家出戻りのショー子が軸になって、家族、商店街関係者、大学教員、大学生、地元住民を巻き込みながらドラマは展開していきます。

アタシも、学生とともに加茂市や燕市で、地域振興の活動に取り組んでいるので共感をもって面白く読めました。

タカコの実家は商店街にある老舗の書店。アマゾンとイーオンに浸食され、他の店と同様、客足は遠のく一方だ。かつてにぎわったこの商店街は、いまやシャッター街と化した。そんな瀕死の商店街に、10代で家を出たタカコの妹、ショーコが突然帰ってきた。ショーコは、実家で出産し、子育てを商店街でスタートする。

ショーコは、東京でカリスマ店員として働いていた経験を活かし、商店街再興に情熱をかたむける。商店街内託児所の企画、商店街をあげてのファッションショー、個人商店への大学生ステイ受け入れや、マンスリーショップの運営。商店街で生まれたショーコの娘、街子も商店街の人たちに可愛がられて、すくすく育っていく。

山内さんは、この作品の為に地元、富山の商店街を徹底取材したそうである。いま日本全国の地方商店街が直面している問題が、リアルに描かれている。

タカコにショー子、そして、地元国立大学の都市環境デザインを学ぶゼミを担当、商店街の振興をテーマにかかげ、学生とともに研究活動を続けるうちに、商店街にずぶずぶとのめりこんでいく原まゆみ。物語の展開を担うキイパーソンはみな女性だ。

商店主の寄り合いである振興組合は代々の土地と店を守る戸主が実権をにぎる男社会、身代さえ潰さなければいいというアタマなので、外から波風を立てられるのをひどく嫌悪する。商店街の閉塞性、保守性は、高度経済成長の甘い汁を吸いつくしたジジィどもの、先細る未来へのあきらめに絶望の根がある。

頼みになるはずの市役所の中心市街地活性化担当者は、タカコにショー子の仕掛けるプロジェクトに冷ややかだ。あるある!

商店街主催のしろうとファッションショーで多くの来場者を集め、大成功させる。ところが、イベントが終わるや、騒音がやかましいと警察に苦情を訴える住民こと、商店主たち。敵は内にあり。商店街ファッションショーで学生をスタッフとして参加させた、大学講師の原まゆみは、気落ちしてうなだれるゼミ学生たちにこう声をかける。

このことも皆しっかりとレポートに書くこと。商店街を盛り上げたいという善意で動いても、地域の人の中には、それを迷惑に思う人もいること。今回、決して一枚岩にはなれなかったことは、すごく大事な問題であること。その上で、商店街がこれからどうあるべきか、各自考えるように、と。

イベントは参加する住民からすれば、にぎやかでこころ華やぐ祭りである。しかし、それを計画し運営するスタッフからすれば、善意悪意の感情渦巻く、切った張ったの修羅場である。大学の講師、原まゆみの「リアルな現実に学べ」というメッセージは、アタシも実感するところである。商店街は市民社会の縮図。苦い経験も、痛い経験も、よい社会勉強になるのだ。あるある!

作品の中で、タカコにショーコの心強い助っ人となる蓮沼という、知的で洗練されたセカンドキャリア男性が、とても魅力的だ。蓮沼は、商店街シェアハウス事業の事務局をみずから買って出た。彼の熟練した交渉術、ひとたらしの技があればこそ、振興組合の協力を取り付けられた。シニア男性は、渋く脇を固められるバイプレイヤーがよく似合う。

イベントでマイクを任せると抜群の仕切りを見せる、地域密着のフリーアナウンサーが活躍したりと、新潟のどこかの商店街と重なり合う。漫画を読んでいるように絵が浮かび、コミカルでライトな感覚でたのしめる商店街小説です。まちづくり「あるある!」の共感満載です。ご一読をおすすめしやす。

2021 年 2 月 8 日

中島副代表コラム「横山 操展」

Filed under: 副代表 中島 | Author:STAFF | 時刻:18時24分

横山 操展

 

先日、新津美術館で開催中の「日本画家 横山操展」を観てきました。恥ずかしながらアタシは、新潟県ゆかりの日本画家、横山操(みさお)の名を知りませんでした。

 

たまたま同じ日の朝にNHKのEテレで放映された「日曜美術館」の「雄々しき日本画~横山操、伝統への挑戦~」を自宅で観て、ず~んと心に響くものを感じ、衝動的に金津方面に車を走らせました。

 

さほど美術に造詣が深いわけではないけど、自分の中の日本画のイメージを崩されたことが、衝動の源になっています。日本画というと、花鳥風月の美しさを描いた床の間に置かれるような装飾的な美術というイメージがあったけど、横山操の絵には洋画のような肉厚さ重厚感と感情を叩きつけるような迫力を感じました。ひと言でいうなら「パッション」。

 

今回の展示では、戦前の10代の頃の作品や戦後の青龍展での出品作に加え、これまでの「横山操展」では公開されることの少なかった作品も紹介されています。

 

大胆な構図と、黒を基調に、時に差し色のように赤が配され、色のコントラストが絶妙です。ごつごつとした岩の塊のような生命力。作品の根底には、「20代の10年間を従軍とシベリア抑留で奪われた悲惨な体験が横たわっている」といわれます。壮絶な戦争体験は作品のモチーフではなく画風となって表現されています。53歳で亡くなりますが、後年、叙情的作風に変わってからの、弥彦や妙高の山を描いた作品が気に入りました。

 

新潟の景色を描いた、

「ふるさと」

「弥彦山」

「茜」

は個人的におすすめです。空気感までもが伝わるような描写に魅了されます。

 

新津美術館で、1月23日(土)から3月21日(日)まで観ることができます。後半一部作品が替わるそうなので、アタシはいま一度リピート鑑賞しようと思っています。

 

2020 年 2 月 1 日

法人ニュース 中島副代表のコラムご紹介

Filed under: 副代表 中島 | Author:STAFF | 時刻:23時57分

モテない父のバレンタイン

バレンタインデーが近づいてきました。デパートやスーパー、コンビニでは、鮮やかにポップアップされたチョコレートが、ところ狭しと並べられて、あたしのように「青春のバレンタインデー」は、すなわち「黒歴史」だった暗い過去を持つ男をイラッとさせます。

もらえばもらったで、ホワイトデーのお返しを考えなければいけなくて、それはそれで「難儀」だったりします。ちなみにあたしが家族からプレゼントされるのは、賞味期限間近の半額値引きチョコで、「義理チョコ」ならぬ「ぎりぎりチョコ」です。エビでタイを釣る魂胆が透けて見えます。

バレンタイン豆知識。
恋人に贈るばかりがバレンタインでないことは、今や国民的常識となりました。
……お世話になったあの人へ贈るのは、「世話チョコ」といいます。
……家族へ贈るのが「ファミチョコ」。
……自分へのプレゼントにするのが、「マイチョコ」

あと、こういうのもあります。
「きょうはバレンタイデー、お父さんへの感謝のチョコはどこだ?」
「お父さんの〜、テーブルに置いておいたわよ」「どこだよ?」「あちょこ、あちょこ」

家族からもらう義理チョコほど寂しいものはありません。
バレンタイデーの晩は、「おちょこ」でやけ酒と行きましょう!

2018 年 8 月 9 日

NPO法人ニュース 中島福代表コラム

Filed under: 副代表 中島 | Author:STAFF | 時刻:22時06分

年に4回法人ニュースに中島副代表のコラムを掲載しています。ブログでもご紹介します。

【学生が商店街で学ぶ意味】
先日も加茂にある商店街の納涼祭ビアガーデンに、中島ゼミの学生がスタッフとして参加したけれど、
そんな活動をかれこれ10年以上も続けている。そこで、学生は地元の人たちと交わり、露店で飲食物を売り、
経験値を高めている。そこで一緒に汗を流すのは、地元でお店を営む人たち。いわば、商人(あきんど)だ。
彼・彼女らは、仕事柄、物腰柔らかく、腰が低く、人当たりがよい。そんな、おとなたちと関わることで、
サービス精神やもてなしの心を学んでほしいという思いがある。こうしたことは、教室では絶対に学べない。よく、アタマで覚えたことは忘れやすいが、身体で覚えたことは忘れにくいという。
生ビールを注ぐときに意識する黄金比は、お客に対する思いやりなのだ。
こう書くとお叱りを受けるかもしれないけど、職種によっては、自意識が高い割には他者意識が低く、
尊大な振る舞い鼻についたり、また、気配り、心配りの苦手な人がいたりする。
こういう人は、若者たちのキャリアモデルにはふさわしいとは言えない。その点、商人さんは、
「情け」の伝え方が上手なのだ。スマホ世代で、希薄な人間関係を生きている大学生に、身に付けてほしいのは、「いつも、ありがとうございます」
「これからもよろしくお願いします」といった言葉を惜しまない、人に対して謙虚な姿勢と態度である。
どんな仕事に就いても人当たりの良さは社会に出ても役に立つ。思いを態度にあらわす。
なので、あたしは、センセだけど学生を教えずに、地域に送り出すのです。あたしのビールの注ぎ方はいつまでもヘタである。とほほ。

2016 年 6 月 29 日

年4回発行のニュースレターに中島副代表のコラムが掲載されます。人気なので、ブログでもご紹介

Filed under: 副代表 中島 | Author:STAFF | 時刻:22時23分

昭和のメンコ

 

                          中島  純

 

最近、あたらしい趣味が加わりました。メンコ収集です。昭和の時代、学童保育児童だったボクにとって、ノスタルジーを刺激する遊びのアイテムです。女の子は、リリアンにゴム跳び。男の子はメンコに三角ベースが、小学生の遊びの定番でした。ネットオークションで出品されていたものに、何となく心惹かれて、“ついで買い”を重ね、気が付けば千枚を超えていました。

絵柄がいいですね。ボクが集めるのはもっぱら昭和30年代につくられたものです。「もーれつア太郎」「巨人の星」「鉄腕アトム」「タイガーマスク」などテレビの人気番組のほか、コント55号、里見浩太朗、藤田まこと、桜木健一など、往年の芸能人、タレントの顔を見ることができます。著作権が大手を振らない大らかな時代、数十円で買えた財布にやさしい玩具でした。陽だまりの匂いがする縁側で、亡き父や、叔父と興じたときのシーンが思い出されます。

裏にすると、ロケット砲、機関銃、大将、元帥など、ミリタリーワードが掲げられ、じゃんけん記号などとともに、7〜8ケタの巨大数字が記されています。通常メンコは地面に叩きつけ、風圧で相手の札を返す遊び方をしますが、そもそもこれらの記号は何のためにあるのでしょう? わたしも長年、謎でした。昭和メンコのブログによれば、もともとはメンコの業者が少しでも遊び方に付加価値を付け、子どもらに買ってもらおうとしたもので、数字や階級で優劣をつけて競わせるいわば今のカードゲームのような遊びに用いられた、といいます。特に決まったルールなど無く、通常の遊び方に飽きると、子どもたちは創意工夫で遊びの応用を広げていったのです。

さて、こうしてマイブームとなった昭和メンコ、勤務する大学で学生さんと遊んだり、地域のイベントで子どもたちやその家族に配ったりして活用しています。ボクが集めているのはおもに角型のメンコなので、丸メンコがスタンダードな新潟ではめずらしがられます。今年は、公民館や高齢者大学などで、シニアの方と昔を懐かしみながら、遊びたいなと考えています。世代間をつなぐ交流アイテムとして、地域の活動の中で用いていきたいと思います。

ところで、あなたは今でも紙でメンコを折ることができますか?()

 

参考:「昭和メンコ館」http://pansu.exblog.jp/

 

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